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ファーストエイド:機内で病人が発生したら

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病人発生

機内で病人が発生することは多々あり、それぞれの症状に適した応急処置を行うことが不可欠です。このためスチュワーデスには救急介護の知識も必要です。私の乗務での経験では、お客様は気分が悪くなられると、トイレに立とうとされ、エコノミーの場合、機内後部のラバトリー(トイレ)に向かっていく途中、あるいはラバトリーの前で意識を失われたり、倒れたりなさることが多いです。(ラバトリー付近に乗務員が必ずいるのはこのためでもあります。)

まだジュニアのころ、ラバトリー前で泡を吹き、白目を向いて倒れたお客様を前に、あたふたしてしまったことがありました。どうしていいかわからず助けを求めた先輩は、実に冷静に的確な対応・処置を、目の前でてきぱきこなしました。本当に尊敬するばかり。スチュワーデスには咄嗟の時にそうした適切な処置ができるかどうかも問われています。

もちろん事が重大な場合はチーフなどが機内アナウンスでお医者様や看護士のお客様に協力を依頼することもあります。以下はほんの一部ですがそれぞれの状況に合わせた応急処置方法です。

このごろ話題になっているエコノミークラス症候群(=deep-vein thrombosis= 深部静脈血栓症)はずっと座りっぱなしでいることで体内に血栓(血の塊)が生じるもの。血栓が血流によって体内の他の部位に移動し、最悪の場合は発生から2時間で死亡することもあります。機内では同じ姿勢で長時間いるほか、水分が不足になりがちなことが要因となります。機内で水分摂取は1時間当たり50cc を目指しましょう。時々軽く体を動かすことも重要です。

また気圧の関係で、機内ではアルコールのまわりが地上より早いため、控えめにたしなむことが重要です。

症状 応急処置
発熱(fever) 楽な体位で安静。氷のうで冷やす。保温・清潔・環境調整、解熱剤の投与。
下痢(diarrhea) 腹部を冷やさない。腹圧をかけないような姿勢。安静。固形物・繊維を含む食品を避ける。程度によっては、絶食・流動食・軽食。水分の補給(コーヒーはだめ)
脳貧血(cerebral anemia) 顔面蒼白、失神、脈拍微弱、呼吸浅い、不整
  • 風通しのよい場所に安静。頭部・上半身を低く。衣服ゆるめる。
  • 手のひら、足などを強く摩擦。アンモニア・酢を嗅がせる。鼻孔を羽毛で刺激。
嘔気(nausea, vomitting)
  • 絶食。精神的安静。
  • 嘔吐時の介助:頭を低く、背中をさする。
  • 吐物の排除:臭気が広がらないようお客様の目に触れないよう。
  • 意識的に大きく呼吸させる。口腔内の精拭。うがい。嘔吐後の注意。状態の観察。原因の考察。
狭心症(angina pectoris)
  • 発作15分以下。
  • しめつけられた感じ。不安・苦悶感。顔面蒼白。冷や汗。脈拍頻数。重症では不整脈。呼吸浅い。発作は数秒ー数分。
  • 安静。鎮静剤投与。上体を少し高く(心臓への負担を軽くする)。四肢保温。心臓部に微温シップ。酸素吸入。ショック状態に陥ったらショックの処置。喫煙・飲食の禁止。冠動脈拡張剤(二トロール)の 投与。発作時は舌下投与。
心筋梗塞(myocardial infarction)
  • 50-60歳に多い。
  • 痛みが続く。ショック状態に陥ることあり。顔面蒼白。冷や汗。脈拍微弱。
  • 処置は狭心症とほぼ同じ。
ショック(shock)
  • 激しい出血、脊椎・骨盤・大たい骨などの骨折、内臓損傷、激しい水分喪失(脱水症状)などで起きる。
  • 顔面蒼白、虚脱、冷汗、脈拍触知不能、呼吸不全。
  • 患者の足を25−30センチ上げて寝かせる。毛布などで包み、体温維持。重度の場合、患者を直接抱いて温めるなど加温する。呼吸障害があれば、気道確保、人工呼吸を行う。
てんかん(epilepsy)
  • まず周囲が落ち着くこと。名前を呼びかけ、それに対する反応、表情、顔色、発作の持続時間をみる。発作後の状態(麻痺がないか、意識の状態、体温など)観察。
  • けいれんは1分以内。途中で無理に止めようとしないこと。呼吸が一時的に止まることもあるので、無理やり蘇生しようとしないこと。毛布の上などに寝かせる。衣服を緩める。吐物を口の中に貯めている場合は出させるよう、横向きにさせる。けいれん後眠るようであればそのまま寝かせる。
  • 口の中に物をいれると無意味。口内を傷つけたり歯を折ったり、嘔吐を引き起こしたりするため。

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